39歳子供部屋おじさん、異世界転生できませんでした(後編)【たらい回し人生相談】
【たらい回し人生相談】〜ヤバいやつがもっとヤバいやつに訊く〜 連載第4回
■人間関係リセットぐせと戦う:
大司教:それはいいとして。今回、我々のコネを潰したというか現地の有力者の顔をつぶしてしまったわけですが、それに対する落とし前とかってないんですか。これは不可避の問題ではなかったですよ。具体的には、現地で偉い人がAさんに会いに来た時、めんどくさいって会わなかったとか、現地の生活に合わせる気がないとか、そういうところはこちらも確認しています。
A氏:えー。それについては。今後そちらと関係を断つ覚悟で。
K氏:ファッ!?
大司教:それは逃げてるだけですね。
Y氏:日本語教師をやるというのはいいと思うけど、そんなやり方だとまた同じようなことになると思いますよ。個人的にはアフガン行ってほしいけど(笑)
K氏:ベストを尽くせば結果は出せる。
Y氏:まあ日本で動いてみたらいいのでは。いちおう確認するけど、カンパのお金を返す気はあるの? まあ期待してないけど。
A氏:返せと言われれば返します。
大司教:なんかズレてるんだよな。これは教育のつもりで言いますが、子供部屋おじさんがバックレ宣言してるようにしか見えないんですよ。あなたのここ2ヶ月間の態度がずっとそれ。
A氏:……(黙り込んでしまう)
大司教:黙って時間切れ狙いか? Aさんにはここで逃げる人になってほしくないね。今が変わるタイミングなんじゃないですか。仕事がどうこうお金がどうこうじゃなく、困ったことになったら人間関係をリセットして逃げる癖を卒業しないと。
長らくA氏は沈黙を続け、ようやく口を開いた。「今後ともお付き合いさせてください」彼は人間関係を断ってバックレるのを止め、今後がどうあれ、できるだけ誠意ある対応をすると約束した。お金の件についても、何らかの形で返していきたいという。
他のメンバーも、それぞれ思うところはあるものの、A氏に悪気がなかったことは理解し、彼なりの誠意、あるいは誠意が持てるまで待とうという気持ちが感じられた。筆者から見ても、そこには確かな仲間意識があった。査問会の空気も初めに比べるとずいぶん和らいだものになった。
しかし例外が一人いた。大司教である。
大司教:(筆者に)どうですか? これで記事になりそうですか?
筆者:……まあそうですね。ある程度話がまとまったみたいですし。このままでも、いい話みたいなまとめ方はできるんじゃないですか。ダメだし失敗したけどまた頑張っていこうみたいな……。(ざっくりと本稿の構想を説明)
大司教:ふーん。いい話ねえ。
場の空気に流されない大司教は、他のメンバーに同調することはない。彼はここから、さらにA氏への糾弾を開始した……!
大司教:反省しているつもりになってるだけだね。Aさんは。働きたいとか金を返したいとかいうけど、そういう細かいことはいいんですよ。人生の方向性的な意味で、今後こうしたい。というのはないのか?
A氏:なんでしょうね。ここで自分が何か考えて言ったとしても、違うって言われるからあまり言いたくならないというか……。
大司教:それをナメた態度というんですよ。
H氏:仕事でそれやってたら通らないですよ。
Y氏:でもまあ。無理じゃん。彼には。
K氏:ダメみたいですね(諦観)
大司教:ようやく自分がなにもやれてないカスだと自覚できた今この瞬間に、何でもいいから約束させないと変わらないんだよ! お前らはなあなあで済ませてもいいと思ってるだろうけど、それじゃこいつは変わらないだろ! 適当に謝って時間稼いでたらどうにかなったって経験にしかならないよ。クソみたいな学習にしかならねえだろ。変わるには底つきした今しかないだろうが! 俺はまっとうにやれるから見てろでも、カネを稼いでくるから待ってろでも、今は雌伏の時だでも何でもいいよ。できそうなことを具体的に示して約束しろよ! (筆者が)いい話にまとまるって言ってたけど、それじゃダメなんだよ! 次はがんばりましょう、でいい話で終わっても次なんかねえんだよ! 今ゼロなんだからよ。
A氏:……。
こうして、大司教の激怒によって会は幕を閉じた。
前述の通り、失敗したが次はがんばろう、というテレビのドキュメンタリーみたいなまとめ方で当記事を終わらせることも筆者にはできた。しかし当記事ではあえて、このような歯切れの悪い終わり方をさせていただく。これが現実だからだ。そう簡単に人は変わることはできない。A氏は変われるだろうか? まだわからない。
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